今回のの鈴研ラボは『食品添加物としての過酢酸』です。

2016年に食品添加物として認可された新規殺菌料:過酢酸ですが、まだ国内での情報があまり整理されていない状況のようなので、この動画にて概要をわかりやすく解説していきます。

講義で使用されているスライドのPDFはこちら

海外ではメジャーな過酢酸殺菌が日本国内でも使用され始めています。そこで本動画では米国での使用実績や、同じ殺菌料である塩素との違い、実際の導入場面や過酢酸の弱点等について実験を交えて講義を行ってまいります!

 

第1章 食品添加物としての過酢酸

第1章では2016年の「過酢酸及び過酢酸製剤の規格基準」制定までの流れを、TPPの話等を交えながら解説しております。

もともと殺菌剤としての歴史が古く、1902年には「優れた殺菌剤である」との報告がある過酢酸ですが、医療用途、ペットボトルの無菌充填から食品添加物認可に至るまでの流れを概説しています。

 

第2章 過酢酸のメリット

食品衛生分野における過酢酸のメリットについて、

残留毒性がない

有機物による減衰がない

塩素とは異なる殺菌機序を持つ

次亜焼けを起こさない

という4つの長所について解説を行いました。

 

過酢酸は殺菌時に、塩素同様の酸化作用のほかにも、細胞内部への浸透による酵素や代謝系阻害による微生物不活化効果が報告されています。このため、芽胞菌(ウェルシュ菌etc)のような塩素が効かない病原微生物(耐塩素微生物)対策としても有望視されております。

また一番の特徴は有機物と接触しても濃度が減衰しない点であり、この長所から食肉等の表面殺菌には最適との考えもあります。

イタリアではこの特徴を生かし、下水放流水の消毒にも実用化に向けた研究が進んでおります。あるいは養豚場や養鶏場における踏み込み槽への導入も検討されています。

動画内では実験として市販の豚ブロック肉を過酢酸溶液に浸漬したものと、同じく塩素溶液に浸漬したものを比較し、両者の有機物による濃度減衰の状況を観察しました。

濃度測定器を用いたこの実験映像を見ると、過酢酸による鶏肉(ブロイラー)の漬け込み殺菌が米国をはじめ実績のある使用方法である点が納得できるかもしれません。

詳細はぜひ動画にて実験をご覧ください!

 

第3章 過酢酸の具体的な使用法法

第3章では過酢酸の食品に対する具体的な使用法法について解説を行っています。

厚生労働省発表実験結果では、過酢酸濃度 200ppm × 30分間で、

・大腸菌は3log = 99.9%除菌

・カンピロバクターは4log=99.99%除菌

の効果があると報告されています。

 

この実験に伴い、CT値(「濃度時間積」)の概念についても解説を行い、

過酢酸の低濃度×長時間殺菌に対する可能性にも言及しました。

上記のメリットが示すように、過酢酸は有機物に接触しても濃度が減衰しにくいことから、

食肉等を浸漬しても濃度が安定に保たれたままであり、長時間接触にも向いているのではないか⁉

そんな期待について解説を行っています。

 

その他、過酢酸の数少ない弱点についても実験結果を用いて説明を行っているので、今後過酢酸消毒の導入を検討なさっている方は是非ご参照ください!