なにかと話題の「PCR」についてわかりやすく解説しています!

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最近よくニュースで耳にするPCRについて調べてみると、

極端に専門的なメーカーさんによる解説ページか、

ざっくり端よった数分間の紹介動画が多く、

もう少しすっきり理解したい方向けの情報が乏しいようだったのでこの動画をUPいたしました。

じつは筆者も学生時代初めてPCRに携わった時、全体を俯瞰して説明してくれる簡単な資料がなく、理解するのに大変苦労しました。

そこでこの動画ではまず、

PCRを理解するための予備知識としてどうしても必要な2つのキーワード、

「塩基配列」と「相補性」

について解説を行いました。

1.予備知識:「塩基配列」と「相補性」

「DNA」とは4種のヌクレオチドが交互につながった巨大分子の名称であり、遺伝情報として重要なのはヌクレオチドの先にくっついた「塩基」の並び順なのだ、という話。

またヌクレオチド4種は、先端にくっつく塩基の種類「A」「T」「G」「C」によって分かれています。

この4つの塩基は、それぞれがくっつく相手が決まっているという話。

2.PCRが実際に使われている場面

続いてPCRが使われる場面としてイメージが湧きやすいように、

・犯罪捜査(科捜研的な話)、DNA鑑定

・遺伝子組み換え植物

・微生物の種の鑑定

等をご紹介しました。

3.DNAが増えると何がうれしいのか?

それからPCR操作において

・なぜDNAを増やすのか!?

・増えると何がうれしいのか!?

・増えたDNAをどうやって鑑定するのか(電気泳動)!?

について解説を行っています。

いまさらながら電気泳動の部分はPCRをライトに理解したい方には冗長かもしれないので、

その部分は早送りしてもよいかもしれません。

4.偽陽性、偽陰性はなぜ生じるの?

またウイルス検査でしばしば問題となる「偽陰性」「偽陽性」がなぜ生じるかについて、

そしてPCR検査ではウイルスの生死判定(≒感染力の有無)は出来ない点なども解説を行っています。

 

5.PCRの登場は生命科学分野で何が画期的だったのか

ちなみに動画では触れなかったのですが、

微生物業界の人間にとってPCRの何が最も画期的だったかというと、微生物の鑑別が数時間でできるようになった点が大きいです。

どういうことかというと、

例えば食中毒事件が起こったとする。

有症状者は共通して鶏肉料理を喫食していた点から原因としてサルモネラ菌が考えられた、とする。

ここでPCR登場以前では、

1.患者から採取した検体を培地に入れ、菌を増殖させる

2.培地上に形成されたコロニー(菌の塊)から、「大腸菌だけ増える培地」とか「サルモネラ菌だけ増える培地」、のような選択性のある培地へ改めて菌を植えていく

(菌にはそれぞれ好みの栄養素や嫌いな成分があり、選択的にこの菌だけ生える培地、みたいなバリエーションがいっぱいあります)

3.「サルモネラ菌だけ増える培地」で改めてコロニーが形成されたから、症状の原因菌はサルモネラ菌だ、と判断する

こんなステップで原因菌を鑑別するので、1回培地を培養するごとに ”36℃で24時間” みたいな手間が必要となり、時間がいっぱいかかったわけです。

 

これがなんと、PCRを使えば数時間で菌種の鑑別が出来てしまうのですから、現場としてはとても画期的な装置ですよね!