この講義では、巷にあふれる消毒用塩素剤の違いを明らかにしていきます!

動画に使われたスライドのPDFはこちら

2020年のコロナ禍以降注目を集めるようになった次亜塩素酸水(酸性電解水)とは、まったく新しく誕生した消毒剤なのでしょうか⁉

答えは「NO !」です!

 

もともと昔から水道水にも添加されている次亜塩素酸ナトリウム、あるいは薬局やドラッグストアで購入できるハイターやブリーチ系の消毒剤(漂白剤)、他にはプール等に放り込まれている固形塩素剤(“さらし粉”とも呼ばれる次亜塩素酸カルシウム)、いずれも殺菌効果の主成分は「次亜塩素酸」と「次亜塩素酸イオン」です。

つまり、どんな塩素系消毒剤にも「次亜塩素酸」は含まれています。

 

それではなぜ近年この「次亜塩素酸水」なるものが注目を浴びているのでしょうか⁉ そのあたりの謎が、この動画を見終わるとすっきりわかるようになります!

 

■そもそも塩素とは?

塩素はもともと自然界では気体で存在する物質であるため、持ち運んだり何かに混ぜたりするには不便です。このため科学者たちは知恵を絞り、固形の粉末や液体に塩素を溶かすことで使い勝手を良くする加工・工夫を行いました。

その結果私たちの身近に存在する様々な「塩素系消毒剤」が誕生したわけなので、元をたどればどれも同じ「塩素」という物質を加工したところから始まっているわけです。

 

■「次亜塩素酸」とは?

塩素剤を水に溶かすと、分解→化合を経て、「次亜塩素酸:HClO」という化学物質に変換されます。ここでいう「酸」は、「酸素:O」がくっついた塩素、という意味での「酸」です。つまり酸素の「酸」であって、「酸性-アルカリ性」の「酸」とは関係ありません!

化学ではこのように同じ感じを使っているけど意味が違う、ということがよくあるので紛らわしいのですが、pH(ペーハー)が“酸性”だから“次亜塩素酸”ということではありません!

 

■「次亜塩素酸水」とはなにが長所なの?

従来型の塩素系消毒剤は、濃度を性質を安定させるために、液性(pH)が多くはアルカリ性でした。一方次亜塩素酸水は、別名を「酸性電解水」と呼ばれることもあるように、液性(pH)が酸性です。

 

実は塩素を溶かした後の水が酸性アルカリ性かによって、水中に存在する塩素の形態が異なってくるのです。

塩素剤を水に溶かすと分解-化合して化学(物質が変化する、モノが化けるので“化け学”)的な変化が行われるのですが、その際に酸性アルカリ性かによって、その“化け方”が異なるのです!

このため、塩素が溶けている水が酸性の場合、塩素は主に「次亜塩素酸」という物質になり、

水がアルカリ性の場合は主に「次亜塩素酸イオン」という物質に変化します。

 

次亜塩素酸水は液性が酸性なので、「次亜塩素酸」がたくさん溶けている水、となります。

 

ここで最も重要なポイントは、同じ塩素が溶けた後の物質なのに、「次亜塩素酸」のほうが「次亜塩素酸イオン」よりも消毒力が強い点です!

 

最近話題の「次亜塩素酸水」は、液性が酸性だから、消毒効果が高い「次亜塩素酸」がたくさん溶けているよ! というのが最大のアピールポイントになるわけです。

文字通り「『次亜塩素酸』水」であって、「『次亜塩素酸イオン』水」ではないよ、というのがアピールなわけです。

 

■「次亜塩素酸水」はどうやって作るの?

主な次亜塩素酸水の作り方は食塩(正式名称「塩化ナトリウム」)を電気分解して作ります。

電気分解とはあまり聞きなれない言葉ですが、要するに食塩水に電気をビビっと流すと、食塩(塩化ナトリウム)が分解されて、塩素部分だけを取り出すことができる、という技術です。(この辺は動画でアニメーションを観ていただいたほうがわかりやすいです)

 

 

以上、次亜塩素酸水とハイター等の従来型塩素系消毒剤の違いについて、製法や化学的特徴、pHと消毒力の関係等について解説を行いました!