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「食中毒とは!?」全3回講義の2回目、『病原微生物の種類とその特徴』です。
1.感染ルート
第1回目の講義より、食中毒の原因はほぼ細菌とウイルスだということがわかりました。
ではそれらの微生物は、どこに住んでいて、どのようにヒトまでたどり着くのでしょう。
上の図では、有名な食中毒原因微生物の代表的な感染ルートを挙げてあります。
まず大きく分けて「自然環境中」「ヒト」「動物」の3か所に分かれるのですが、
たとえば動物が保菌しているサルモネラ菌が、畜産排水として河川に流れた場合は「環境中」に存在することにもなるため、
この図はあくまで目安と考えてください。
特徴的なものとしては海水中でも元気でいられる腸炎ビブリオは、”塩で締めれば安全”となんとなく思っていると盲点を突かれます。
あるいは黄色ブドウ球菌はヒトの皮膚に普通に存在しているので、おにぎりを作るとき、ちょっと顔を触ったりすると危険が考えれます。
2.「毒素型」と「感染型」
微生物がヒトに悪さをするパターンは、大きく分けて「毒素型」「感染型」に分かれています。
「毒素型」は食品内に毒素を産生し、その毒を食べて食中毒となる場合。
「感染型」は微生物が増殖することでヒトに害を与える場合。
そして、毒によって害を与える場合と、細胞を破壊して害を与える場合の2パターンに分かれます。
■「感染侵入型」はヒト体内で増殖し、ヒトの臓器細胞を破壊するようなパターンです。
具体的にはサルモネラ菌やノロウイルスがこのパターンです。
■「感染毒素型」はヒト体内へ侵入した後、ヒトの体内で毒素を産生するパターンです。
具体的には大腸菌O-157やウェルシュ菌がこれに該当します。
3.具体例:ウェルシュ菌
細菌の原因№1であるウェルシュ菌は、普通の細菌と比べて様々な特徴を持っています。
まず、「芽胞」と呼ばれる、外部から自分を守るカプセルを形成すること。
これにより太陽光の紫外線や、塩素等の消毒剤から身を守り、強いストレス環境でも生き残ります。
次に、100℃に加熱しても死なないこと。
文献では100℃で4時間でも死滅しないと報告されています。
最後に、酸素がない状態を好むこと。
”生き物”でありながら、酸素がないほうが増殖しやすいという不思議な特徴を有しています。
この上記3つの特徴を組み合わせると、たとえば給食等で大鍋にカレーを作った場合、
温め直しても菌は生残する可能性があり、また大きな鍋では、鍋底部まで大気(酸素)が行き届かず、
時間が経つにつれて底部のカレーは無酸素状態になります。
その結果カレーとか、同じような食べ物としてシチュー等で大量の感染者を出す事件が頻発しています。
また事件の特徴から日本では「給食菌」、海外では「カフェテリア菌」などとも呼ばれています。
”温め直せば菌は死ぬから大丈夫”という発想は危険なこともあるという例です。
4.具体例:カンピロバクター
続いてカンピロバクターですが、この菌の恐ろしさはなんといっても、新鮮な鶏肉からも検出される(厚労省発表資料)点です。
このため、
鶏肉の調理は中心部までしっかりあっためる!
生肉を触った手で他の作業をしない!
生肉を切った調理器具で他の食材に触れない!
等が大切となってきます。
5.具体例:サルモネラ菌
最後の例はサルモネラ菌です。一時期問題となった感染ルートは「オンエッグ」と呼ばれる卵への付着による感染です。
ニワトリはその体構造上、卵を生み出す卵管と、排泄を行う腸管系が同じ穴で接続されています。
このため、腸管内に潜んでいたサルモネラ菌が卵に付着してしまう可能性は高く、その結果新鮮な卵を食べた消費者に感染が成立するという事件が起きました。
現在は養鶏関係者さんや厚労省の指導により、出荷前の卵の洗浄は非常に丁寧に行われており安心ではありますが、油断は禁物です。
それでは次回、『食中毒対策と注意点』もぜひご覧ください!