今回の講義は「世界で一番ていねいな『モル』の解説」後編です!

動画で使用したスライドのPDFはこちら

 

高校化学で多くの人がつまずくモルについて、

前編では定義に登場する数式について詳しく解説をしました。

 

そこで今回、後編では、

「モル」がわかると何がうれしいのか!?

「モル」の知識は化学でどのように役立つのか!?

「モル」はなんのために学ぶのか!?

を丁寧にすっきりさせます!

 

前編及び後編を見てもらえれば、

辞書に登場する難解な定義がすっきりわかるようになります。

誰よりも丁寧に、省略することなく解説を作りましたので、

どうか気楽にご覧になってください!

■モルの定義

ではまずさっそく、百科事典に記載されたモルの定義を見てみます。

 

赤字の部分の「6.02×1023」の数式については前編でしっかり解説を行いましたので、

もしこの数式を見てアレルギーが出る人は、いったん前編もご覧ください。

 

また定義については動画の最後で、まとめて解読を行いますのでここではいったん内容はスルーしておきます。

動画を見終わると、このややこしそうな定義がスッキリ頭に入るようになります!

■『モル』とは”単位”である!

6.02×1023個を、1モルと言う単位で表します。

ダースなんて単位は使わなくて直感的にわかるけど、

それではお米の単位なんかはどうでしょう。

 

ここに1合がきっかり測れる桝があったとします。

この1合枡には米粒が毎回きっちり6825粒入り、

この1桝で「米1合」というわけです。

 

ではここに、ご飯が大好きな三郎君を登場させてみます。

三郎君は夜ご飯の際に、お米をいっぱい食べます。どれくらい食べるかと言うと、

毎回6825粒も食べます。

このとき、同じ量を表現するために、単位を使うと、1合食べている、と表現できます。

 

次に三郎君の兄、二郎君を登場させてみます。

治郎君は今食べ盛りで、三郎君よりも一杯ご飯を食べます。どれくらい食べるかと言うと、

毎回13650粒も食べます。

このとき、同じ量を表現するために、単位を使うと、2合食べている、と表現できます。

2合は1合の2倍であることは誰でも瞬間的にわかりますが、

13650は6825の2倍だ、と直感的にわかる人はあまりいないのではないでしょうか。

 

そして今度は次郎君の兄、一郎君を登場させてみます。

一郎君は最近部活にはまっていて、毎食とんでもない量を食べます。どれくらい食べるかと言うと、

毎回17062.5粒のご飯を食べます。

このとき、同じ量を表現するために単位を使うと、2合半食べている、と表現できます。

2合半は1合の2.5倍ですが、17062.5が6825の2.5倍とはなかなか暗算できません。

この辺までくると、まとまった数をまとめて表す“単位”があると、量の比較が楽になるというイメージは感じていただけたでしょうか。

単位を使うというのはこんな意義があり、6.02×1023個みたいな半端な数も、これをまとめて1モルとした方が、粒子の個数の比較がしやすい、というメリットがあります。

■1mol = 6.02×1023個はどのように決まったのか

なぜ6.02×1023個を「1モル」とする、という決まりが出来たのか、その歴史についてざっと紹介をしてみます。

はじまりはアボガドロという天才科学者が、1811年に思いついた原子や分子に関する理論で、

炭素⑫という炭素原子を特殊な秤で重さを測ってみると、

たまたま6.02×1023個でピッタリ12gだったわけです。

 

原子や分子はとても小さな粒子であり、たまたまぴったり12gになる個数は貴重だ!ということで、

偉い学者たちも、この6.02×1023個は特別な数だ!と考えたわけです。

 

そこでこの6.02×1023個という特別な個数を、原子や分子の単位の元にしよう、

さっきスライドの「米が6825粒で1合」みたいな感じで“単位”を作ろう、と言う話になり、

6.02×1023個を1モルとする単位のルールが出来上がったわけです。

■モルが誕生して何が便利になったのか!?

周期表を見ると、

H原子は1mol、つまり6.02×1023個で1.00798gと書かれていました。

またO原子は1mol、同様に6.02×1023個で15.9994gと書かれていました。

 

そこで水を作るにあたって、H2OはHが2個とOが1個でできているので、

まずHを2モル個集めます。

Hは1molあたり1.00798gとわかっているので、この2倍量を量りとれば2モルとなります。

つまり2.01596g集めます。

つづいてOを1モル個集めます

Oは1molあたり15.9994gとわかっているので、15.9994g量りとれば1モルとなります。

そしてこの2つを水製造機に入れれば、材料の無駄なく水を1モル個作ることができるわけです。

 

ここで少しわかりにくいかもしれませんが、粒子数は合計で3モル分あるのですが、

水素と酸素は合体して化けた結果、水分子として1モルになっている点に注意してください。

■定義の読み方

 

 

文章が長くて見ずらいので、1文1文分割してみていきましょう。

まず、モルとは、世界中の単位統一を目指すルールである、SI基本単位の1つである。

つまりアメリカではインチで日本ではcmみたいに、国によって単位が違うと面倒くさいから、科学の世界では世界統一の単位を使おう、というルールがあって、そのルールの名前がSI基本単位です。

このSI基本単位に決められたことで、1モルは世界中どこでも6.02×1023個だよ、という意味です。

 

つぎに、記号はアルファベットで「m・o・l」、“モル”と表記するよ、ということ。これはそのままの意味です。

 

次に、1モルは6.02×1023個の要素粒子を含む量を指す。要素粒子とは要するに、原子なり分子なり、その物質1モルを構成する粒子の種類です。1モル=6.02×1023個、という意味を難しく言っているだけです。

 

次に、かつて、モルは0.012㎏、ようするに12gの、炭素⑫の中に存在する原子の数と等しい数の要素粒子を含む系の物質量と定義された。

非常に回りくどいい方ですが、要するに、炭素⑫と呼ばれる原子を12gピッタリ集めたら6.02×1023個だったという話です。

 

次に、モルという単位を用いるとき、要素粒子、つまりその物質を構成する粒子の種類が指定されなければならないが、それは原子、分子、イオン、電子その他の粒子またはこの種の粒子の特定の集合体であってよい。

ココが最もわかりにくい部分です。モルという単位を使って個数を数えるとき、粒子の種類は問わないよ、と言っています。

原子とはOやHみたいな単品で存在している粒子、

分子とは、H2Oみたいにいくつかくっついて意味ある物質になっている粒子

イオンとは、H+やCl-みたいに、粒子が電荷を帯びたもの

その他の粒子とは、電子とか陽子みたいに、原子を構成している概念上の物質。よく教科書とかのイラストでは黒い点々で書かれている小さな粒子です。

この辺はモルの話とはまた別の機会に解説しないと長くなるので、今はイメージだけでスルーしてください。

最後に、「この種の粒子の特定の集合体」、とは、原子やら分子やらがくっついて集合体を形成した物質で、たとえばリン酸水素カルシウムと呼ばれる物質は、カルシウム原子と水素原子、リン、酸素、そして水分子が合体して巨大な集合体を形成し、その集合体全体で意味ある粒子として存在しています。

 

こんな感じで物質を構成する粒子はいろんな種類があるけど、すべてモルという単位を使っていいよ、という意味です。

 

以上でモルの講義後編、

モルが使えると何が便利か、という話と、

モルの定義についての解説を終わります。