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『世界で一番ていねいなモルの解説』前編です。

高校化学の一番初めの方に出てくる「モル」ですが、

化学につまずく方の多くは、この「モル」にやられてしまいます。

 

教科書の一番初めに出てくるこの「モル」、

ここで挫折してしまうと、先に続く楽しい(?)化学の世界に触れ合う機会を逃してしまいます。

また大人になってからの学び直しで、辞書で「モル」を検索すると、まず見たくもない数式に出くわしてしまいます!

 

そこでこの動画では前編・後編の2回に分けて誰よりも丁寧にモルの概念を解説していきます。

今回前編では、モルに絡んで登場する、普段見慣れない数式のアレルギーを取り除きます。

そして後編では「モル」がわかると何がうれしいのか!?について具体例を交えて解説していきます。

前編では、数式嫌いな方も絶対スッキリするように説明を行っていきますので、どうぞ気楽にご覧になってください!

 

■モルの定義

まずさっそく、百科事典に記載されたモルの定義を見てみます。

この時点で文字も多いし、聞きなれない単語も連発していてやる気をそがれてしまうのですが、まず何よりも最初にやっつけたい部分は、赤文字の「6.02×1023」の部分です。

 

多くの理科嫌いの人にとって、この手の数式が登場した時点でやる気をなくしてしまうのはやむを得ません。「モル」は、化学の教科書冒頭に仕組まれた、№1の挫折ポイントです。しかし、この動画では必ずスッキリ、アレルギーなくこの定義がわかるようになりますので、少し我慢してどうぞお付き合いください。

前編でこの数式の読み方を徹底的にすっきりさせ、後半では「モル」がわかるとなにが便利かを解説し、前編後編を終えるとモルの定義がすっきりわかるように解説を行ってまいります。

 

■数式の読み方

 

 

ではまずこの「1mol=6.02×1023個」と言う数式について、

理科嫌い、数学嫌いの方が抱く素朴な疑問2点を挙げてみます。

 

1つ目のよくある疑問はおそらく、「なぜ10の右肩に23と付いているのか」?

になるのではないでしょうか。

 

2つ目のよくある疑問は、

なぜ「6」ではなく「6.02」という半端な数字なのか、ではないでしょうか。

 

6も6.02もほとんど同じだから、実際に2002年から始まったゆとり教育では、

円周率「3.14」が「3」になったように、「6.02」も「6」になっていました。

しかし結局ゆとり教育は評判の悪いまま終了し、現在では「6.02」で教科書に記載されています。

 

■指数、累乗の読み方

素朴な疑問❶の、10の右肩に付いた数字は、

10を何回掛けるのか、と言う意味になります。

 

では身近な数字を使ってこの書き方を少し練習してみましょう。

まず10ですが、10は10を1回掛け算しただけなので、101と書きます。

次に100ですが、100は10を2回掛け算してできるので、102と書きます。

千の場合は、10×10×10で、10を3回掛け算してできるので103と書きます。

そして1万は、10を4回掛け算してできるので、104と書きます。

この調子で億は、■一、十、百、千、万と数えていくと、0が8個、10を8回掛け算するとできるので、■108と書きます。

 

このように見比べていくと、数が大きくなるにつれ、10の右肩に省略して書いたほうが見やすいことがわかっていきます。

 

■「6」か「6.02」か!?

 

素朴な疑問❷の「6」と「6.02」は何が違うのかについて、

双子の兄弟、一郎君とニ郎君で比較をしていきます。

 

まず小学生時代のお小遣いです。

一郎君は6×102円=600円もらいました。一方二郎君のお小遣いは6.02×102円で602円でした。

この時点では差は2円しかありません。

次に高校生時代のお小遣いです。

一郎君は6×103円=6000円もらいました。一方二郎君は6.02×103円で6020円でした。

この時点でもまぁ誤差の範囲、と言うところでしょうか。

いずれ時がたち、二人は超一流企業に就職し、初任給をもらいました。

一郎君は6×105=60万円、一方二郎君は6.02×105で60万2千円。

少しだけ差が付いたかな、という印象でしょうか。

そしてある日、

たまたま買った宝くじでなんと1等賞が当たりました!

一郎君は賞金が6×108円=6億円です。一方二郎君は6.02×108円で、6億200万円でした。

ここまでくると、まったく同じ人生を歩んでいる双子なのに、200万円の差があるのは不公平だと思えないでしょうか。

 

頭の数が「6」か「6.02」かで、後ろに掛ける数が大きくなるほど差が開いていきます。

そしてモルの場合、後ろにかける数は莫大に大きいので、「6×1023個」と「6.02×1023個」では「.02」の部分も無視できないほど大きな数字となります。

 

■まとめ

今回の講義ではモルの解説前編として、

1 mol = 6.02 × 1023個 という数式の読み方について、どこも省略せずに解説をしました。

 

後編では、何のためモルという単位を使うのか!?について解説してまいります。